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児童福祉法の改正
2016年に、児童の福祉を担当する公的機関の組織や、各種施設及び事業に関する基本原則を定めた法律である児童福祉法が改正されました。
改正後の児童福祉法では、市町村は、子どもが身心ともに健やかに育成されるように支援を行い基礎自治体であるとし、すべての子どもとその家族(里親及び養子縁組を含む)さらに妊産婦等に向けた支援を行う責務があると明記されています。
市区町村の子育て支援事業
子どもとその家族への支援として市区町村が行う事業は、児童福祉法に子ども・子育て支援法等に挙げられているものがあります。
例えば、乳児全戸訪問事業、子育て援助活動支援事業(ファミリー・サポートセンター事業)、一時預かり事業、地域子育て支援拠点事業、利用者支援事業などです。
市区町村の規模は、人口が数百人のところから百万を超えるところまで幅があり、財源にも開きがあります。
また、その地域によっては特有のニーズがあります。
そのため、市区町村によって具体的な支援サービスの内容や、その実施状況は異なったものとなっています。
さらに、市区町村によっては子育て支援事業の中に心理職を配置しているところもあります。
子育て支援としての心理職の役割として、面接室や家庭訪問による相談、親グループ、子育てに関する心理教育的プログラムの実施、さらには様々な子育て支援事業の評価等があげられます。
ただし、子育て支援の領域は、今なお多くのニーズが潜在しています。
そのため、地域に根付いたニーズの掘り起こしをもとに、ニーズに適した新しい支援事業を、心理学的な観点から提案していくことも重要な役割となっています。
保育所、幼稚園、認定こども園における子どもと親への支援
2012年に子ども・子育て関連3法が制定され、保育所、幼稚園、認定こども園を通した共通の給付である施設型給付、小規模保育や家庭的保育、居宅訪問型保育、事業所内保育を対象とした地域型保育給付等は、市区町村が主体となって行ってきます。
(なお、子育て関連3法とは「子育て支援法」「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律」「(その2法の)施工に伴う関連法律の整備等に関する法律」といったものです。)
社会で働く女性が増えてきて、保育所等への乳幼児入所のニーズは都市部を中心に高まっています。
その一方で、都市部では保育所が足らないがために入所を待つ待機児童が増加し、新たな社会問題となっています。
人口が集中している市区町村は、保育所を増設するなどの措置を取っていますが、待機児童問題の解決にまでは至っていません。
また、保育士の確保や保育の質の確保など、様々な面で新たな問題も生じています。
児童虐待に関する福祉支援
2004年の児童虐待防止法の改正で、家庭からの保護を必要とするような児童虐待といったケースに対する支援は、それまでは都道府県及び、政令市が担うものとされていましたが、この法律の改正により市区町村も加わることになりました。
また、この法律の改正で、在宅支援においてはこうしたケースの優先的な保育所入所を推奨し、支援するべきとしました。
(児童福祉法第24条4)さらに、子どもの一時預かり事業等の子育て支援事業を行う保育所等も増えてきていて、地域のニーズに応じた支援機能の拡大が進みつつあります。
保育の場における課題
今日、児童虐待といった深刻な課題を抱えた子どもと家族が保育所を利用するケースが増加しています。
保育の場では、子どもの養育状況の把握や子どもが抱えた課題の回復や健全な成長を早期に保証する上で極めて重要となります。
一方で、こういったケースで入所する子どもは、不適切な養育環境による影響から心的発達等に問題を抱えている場合が少なくありません。
そのため、通常の保育や教育活動になじまない子どもも多く、かつ特別な配慮を必要とする保護者も増えていて、その対応に苦慮する状況となっています。
このような課題を抱えた子どもと家族に対して、保育士等は子どもやその保護者との信頼関係を築き、支援をしていくためにケースに応じた課題とその背景を検討し、理解する包括的なアセスメント機能を保育所が有することが必要となってきました。
その際、心理的アセスメントや心理的対人援助技術を専門とする心理職が保育所に赴き、保育現場が求める包括的アセスメントに貢献することは非常に有益となります。
すでにこういった取り組みが始まっている保育所や自治体は複数あります。
保育の場での心理職の活躍
心理職の専門家が保育カウンセラーとして保育所を訪問し、保育士とともにカンファレンスを行うなどして、心理的な側面からコンサルテーションやアドバイスを行い、必要な場合は親子への心理的支援を直接行うこともあります。
このような対応は、困難に直面している保育士といった支援者に対しての支援としても評価されています。
子育て世代包括支援センター
2016年の母子保健法の改正により、「子育て世代包括支援センター(母子健康包括支援センター)」を市区町村に設置することが努力義務とされました。
このセンターは、妊娠から子育て期まで支援を提供するために市区町村の子育て支援事業と母子保健施策事業を統合した構想のセンターです。
保健機関と福祉機関の連携及び統合は、子育て支援の展開において非常に重要な意味合いを持ちます。
それらの利用者にとっては、妊娠期と子育て期で、相談窓口が同じであることは、妊娠期で築かれた支援関係を、出産後にも継続できるうえに、子育ての相談もしやすいものになります。
また妊娠期に十分な支援を受けることは、子どもに対する肯定的な感情や、情緒的な結びつきを強めるともいわれています。
周産期は、虐待の早期予防と世代間伝達を食い止めるために、極めて重要な時期であると認識されています。
妊娠期と出産後の子育て支援の一貫性、連続性を目指したこのようなセンターの展開は今後も重要なものになってくると考えられています。
心理職は、乳幼児健診の実施に貢献することはよくありますが、妊婦への心理的アセスメントやメンタルヘルスに関する心理的な支援も有益かつ必要となってきています。